労使の信頼関係が深い会社であっても、公平・公明な企業経営をするためには、懲戒処分を実施せざるを得ない場面もあります。

その際の注意点についてご紹介いたします。

1.懲戒処分の有効要件

  1. 就業規則の懲戒事由に該当すること
  2. 不遡及の原則を遵守すること
  3. 同一事実について2回以上重ねて処分しないこと
  4. 全員に対して平等な取扱いをすること
  5. 相当性の原則(非違行為に対する妥当な処分)を遵守すること
  6. 懲戒処分手続を遵守すること

2.懲戒処分の統計

モデルケース 被懲戒者に対する処分(複数回答)
処分の
対象と
しない
けん責
注意
減給 出勤
停止
降格
降職
諭旨
退職
懲戒
解雇
その他の
処分
 判断
できない
社用車を無断でしばしば私用に使っていることが判明した場合 4.1% 53.5% 39.4% 24.1% 17.1% 5.9% 5.3% 2.9% 7.6%
従業員が終業時刻後に酒酔い運転で物損事故を起こし、逮捕された場合 1.2% 7.6% 14.0% 22.8% 23.4% 36.8% 48.0% 4.1% 6.4%
営業外勤者が業務中自動車で通行人を跳ねて死亡させ、本人の過失100%の場合 1.8% 5.9% 8.8% 21.8% 20.0% 32.9% 45.9% 4.7% 14.1%
無断欠勤が2週間に及んだ場合 1.7% 6.4% 12.2% 14.5% 10.5% 38.4% 53.5% 6.4% 5.2%
業務に重大な支障を来すような経歴詐称があった 1.2% 16.3% 12.2% 12.2% 18.0% 37.8% 46.5% 3.5% 9.9%
売上金100万円を使い込んだ場合 2.3% 7.5% 8.7% 14.5% 37.0% 74.0% 2.3% 4.0%
取引先から個人的に謝礼金等を受領していた場合 1.2% 23.8% 18.8% 16.3% 25.0% 33.1% 31.4% 1.7% 12.8%
同僚の売上金の流用を事前に知りながら報告しなかった場合 8.8% 48.5% 34.5% 18.1% 15.2% 7.6% 7.0% 0.6% 14.6%
コンピューター等に保存されている重要なデータやプログラムを改ざんした場合 1.8% 25.1% 30.4% 29.8% 33.9% 33.3% 31.6% 4.1% 14.6%
社外秘の重要機密事項を漏洩させた場合 0.6% 10.4% 17.3% 21.4% 24.3% 38.2% 63.6% 1.7% 7.5%
兼業禁止規定があるにもかかわらず、終業後や休日にアルバイトをしていた場合 6.4% 49.7% 26.9% 21.6% 13.5% 13.5% 11.1% 2.9% 12.3%
出張の経費を不正に上積みして請求していたことが判明した場合 3.5% 31.8% 39.4% 31.2% 31.2% 27.6% 21.8% 4.1% 7.6%
会社が認めていない自転車通勤により、定期代を不正に受給していたことが発覚した場合 11.7% 45.6% 34.5% 20.5% 17.5% 10.5% 8.2% 8.8% 9.9%
病気と偽り、私傷病休暇・休職制度を悪用し、海外旅行に行っていた場合 2.9% 34.7% 30.0% 27.1% 21.2% 17.1% 10.0% 3.5% 13.5%
車を運転して営業中に得意先から携帯電話に着信が入り、話に熱中して事故を起こした場合 6.5% 38.8% 34.7% 27.1% 20.6% 11.8% 7.1% 3.5% 12.9%
社員割引で購入した商品や無断で持ち帰った会社の備品をインターネットで販売し、利益を得ていた場合 1.2% 24.0% 27.5% 20.4% 20.4% 28.1% 28.1% 3.0% 18.6%
社外持ち出し禁止のデータを独断で自宅に持ち帰っていた場合 4.7% 59.1% 32.7% 26.3% 19.9% 12.9% 9.9% 3.5% 11.7%
資料出所:労務行政研究所「懲戒制度に関する実態調査」